【地域での副業づくりを作る】後編 宿泊施設管理人&名産品の加工販売
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地域特産商品の開発
── そういった活動を続けてきた中で、ここ最近、特に力を入れているものは何かありますか。
野尻:汗見川の周辺は 山深い地域にあるため、獣害による作物の被害に悩まされていました。その中で、唯一獣害の被害を受けていないものが「しそ」なんです。その汗見川流域の特産品の一つとして生活改善グループが作ってきた「しそドリンク(希釈用)」があります。
(食品会社さめうらフーズと共同で開発したおいしそアイス)
── 山の動物にとっても食べ物は命に関わることですよね。彼らが手をつけないものならば、こちらとしても有効に活用できますね。
野尻:そうなんです。アイスの他にも、しそドリンクやドレッシングがあります。しそは疲労回復にも効くと言われているので、ぜひ、この色鮮やかなしそ商品を食べてみてほしいと思います。
地域にあるものを活かす役目
── 地域の交流の場であり、外からきた人たちに地元特有の郷土体験を提供する。国際協力に関わっていた萌生さんがたどりついたのは、地域に密着した活動だったのですね。
野尻:振り返ってみるとそうなりますね。地域の人と近い距離で、地元の人と一緒に汗を流して、現場でものを考えたいという思いがありました。
その一方で、新しいものを生み出す作業は、もしかしたらずっとその土地で育って住み続けてきた人にとって、ある意味見えにくいものなのかなと感じました。
私にとって縁もゆかりもなかった高知という土地にきて、過疎化が進む中山間地域の中で見えてきたのは「その土地の人とモノや、人と人の思いをつなぐことが大事」ということでした。
── 野尻さんが、これから新しく取り組もうと思っていることはありますか。
野尻:今は、汗見川活性化推進委員会の事業推進員としての地域づくりの仕事を中心に動いていますが、その他に林業などの山暮らしのナリワイにも関わっていきたいと思っています。
本山町の森林率は約88パーセントと言われていますが、ここ汗見川の周辺は約98パーセントが山に覆われています。森林保全やその森林資源を活かしていくことが必要だと感じています。
── 「林業女子」という言葉を聞いたことがあります。林業の業界では、男性のみならず新しい担い手を求めている、と。こういう山深い地域に暮らしている以上、その木々を活かしていくことが必要なのですね。
野尻:はい。こういう場所に暮らしていると日々感じますが、自然にあるものって、すべて循環しているんです。
まず、山があるから川ができてそれがゆっくり海に流れていく。そう考えていくと、自然の循環の中で、山を大事に活かしていくことはすべてにつながってくると思います。
── 林業は、体力が必要で危険な仕事というイメージがあります。でも、野尻さんのような小柄な女性も林業に携わるほど、地域では人手が足らない現状なのでしょうか。
野尻:担い手不足とよく言われていますが、新しい視点を持ち、何かをかけ合わせて解決していけたらと思っています。
他にも、汗見川地域でつくられてきた特産品の味噌づくりにも関わり始めました。おかず味噌の「清流味噌」「しいたけ味噌」があります。本山町は原木しいたけの産地です。味噌と合わせた名産品の一つとして受け継いでいきたいと思います。
── 「かけ合わせる」ということが田舎での暮らしのキーワードなのかもしれません。外からきた人だからこそ生み出せる発想は、地元民にとって新鮮に感じるでしょうね。
(汗見川沿いの標高300mの位置にある清流館)
野尻:「地域でのナリワイ・副業づくり」と言ったら大げさかもしれませんが、こういう地域だからこそできる暮らしも面白いなと感じています。
私自身もまだまだ道の途中で、出来ることや新たにやりたいことがありますが、地域づくりに興味がある人は、自信やスキルがないからと臆せずに、思いきってやってみてほしいです。
ここ、汗見川の清流館にぜひ遊びにいらしてください。
インタビューさせてもらった人
野尻 萌生(のじり めぐみ)
福岡県生まれ。国際協力と芸術文化に関心があり、高校時代に休学して1年タイへ。大学時代に教育支援を行う学生NGOで再びタイへ。卒業後「里山」をキーワードに、社会や暮らし、自分の足元を見つめなおすべく、本山町地域おこし協力隊として本山町へ移住。3年間の任期の中で、汗見川流域の特産品づくりや体験交流、そば栽培に携わり、任期後、汗見川流域へ移住。小さな拠点づくり「集落活動センター汗見川」の事業推進員となる。また、農林業や味噌づくり、表現活動など、百姓百業と自分のライフワークを合わせた「百一生」のライフスタイルを模索している。
汗見川ふれあいの郷 清流館 – 美しいまち、本山。