【地元の和の素材で洋のお菓子を】前編   家事育児&洋菓子販売

*嶺北に移住者してきた人で、新規ビジネスや本業以外の副業・二足のわらじの仕事で活躍している人のインタビューです。緑の豊かな中山間地域の土地を活かした仕事をする人や、海外と関わる活動をする人など、それぞれの個性・得意分野を活かした仕事をしている方々の特集記事です。

⏺音声でのインタビューはこちらから聴けます⏺

近年、都会から地方に移住する人が増えています。

子どもの子育て環境のことを考えた上で田舎に引っ越したり、食べ物を自分で生産するためにだったりと、人によって理由は異なりますが、地方・田舎の需要が高まってきています。

上土井恵子(かみどいけいこ)さんのご家族も、2015年の4月に高知に移住してきました。

(高知県のお山のてづくり市でお菓子を販売している上土井さん)

 

結婚を機に京都に住み、野菜作りとのびのびとした子育てをなさっていた上土井さんご夫婦。

しかし、より「空気と水がきれいで、おいしいお米が作れる場所を」と考えるようになり移住を考えるようになりました。

土佐町は、まさにその条件にぴったりな場所。

(美しい土佐町相川にある棚田)

 

昼夜の気温差が約15度、寒暖の差が作物を美味しく育ててくれます。

土佐町は、高知県の三大米どころの一つ。

土佐町自慢の棚田で育った美味しいお米、相川米は特に有名です。

お米は毎日食べるものだからこそ、美味しいもの、安心して食べられるものを食べていきたい。

 

上土井さんは焼き菓子を販売しています。

京都からの移住のお話や、土佐町で焼き菓子の販売を始めた経緯について、詳しくうかがいました。

京都から土佐町へ

── 上土井さんは東京出身とのこと。結婚を機に京都へ移り住んでいますが、関東との文化の違いなどは感じたでしょうか。

上土井恵子(以下 上土井): 私は夫との結婚を期に京都に移住したのですが、京都では特有の雰囲気や風習といったものを感じました。言葉も食べ物も関東とは少し違いましたね。

京都では夫の希望していた農にまつわる暮らしをしていたのですが、畑の場所が急な斜面であまり農業に適した場所ではありませんでした。かなり獣害の被害がある地域だったんです。

「ここでずっとやっていくのは難しいな」と思っていた時に、高知の土佐山へ引っ越した友人を訪ねました。その時「高知の環境はいいなぁ」と感じたことが高知移住のきっかけでした。

その後、土佐山の隣にある町、土佐町で地域おこし協力隊の募集があることを知り応募。夫が採用されたことをきっかけに、土佐町に移り住みました。

 

(透き通った水が流れる土佐町の地蔵寺川)

 

── 暮らしてみて初めて分かることもたくさんあると思います。土佐町は上土井さんご夫婦にとって満足できる環境だったということなのですね。

上土井: まず「お水がおいしい場所に住みたい」と考えていました。暮らし始めて感じますが、土佐町の山や川など自然環境は本当に素晴らしいです。

近所の方々にもいつもよくしてもらっているのですが、ここ嶺北(土佐町を含んだ1村3町の地域)は、移住者同士のつながりもゆたかで、なにか困ったことがあったらいつでも話せる人がいることはとても助かっています。

また、土佐町の隣は高知市になるので、買い物や面白そうなイベントがあればすぐに行ける距離であることも気に入っています。

お菓子づくりのはじまり

── これだけまわりの自然が豊かだと子育てものびのびとできるでしょうね。移住してきた人同士のつながりがあるのも頼もしいですね。

上土井: 京都と比べると本当にそう思います。子どもたちも自由に走り回れる場所がすぐ近くにあって楽しそうです。暮らしていく上で、まわりの自然や食の豊かさはなによりも変えがたいですね。

そしてすぐそばに自然派のパン屋さんやこだわりのコーヒーショップもあるので、そういったお店があるのもうれしいです。

(本山町にあるファーマーズカフェ。添加物やマーガリン・改良剤を使 っていない自然派のパン屋さんです)

 

── それはいいですね。お菓子づくりと販売についてもお聞きしたのですが、いつ頃から始めたのでしょうか。

上土井 :きっかけは京都にいた時のことです。京都で知り合った人たちが子どものおやつにとお菓子を自分で作っていました。そこから添加物や保存料について考え始め、いろいろと感化されました。

友だち同士で「夜バー」を開くことになって「じゃ、恵子さんはお菓子担当ね。」と、突然指名を受けてしまって…。その時にお菓子をで作ったことがきっかけでした。

 

── 事前に準備していたわけではなく、いきなりお菓子作り担当になってしまったのですね。

上土井 :はい。ちゃんと自信を持ててから出したかったのですが、いきなり出番がきてしまったというか。まわりのお友だちの助けもあって、たくさんお客さんが来てくれて初回から売り切れてしまいました。逆に「これはもっとちゃんとしないと」と思い、材料や作り方を深く学ぶようになりました。

それまでは自分で作ったお菓子を販売しようなんてまったく考えていなかったのですが、その「夜バー」だけでなく、京都市のお寺で開催している月一の手づくり市に出店するようになりました。

(上土井さんの「恵菓」で販売しているアーモンドショートブレッド)

 

── なかなかめまぐるしい展開ですね。高知に移住した後も、お菓子づくりと販売は続けていこうと考えていたのでしょうか。

上土井: 土佐町に引っ越してきたら、偶然、おとなりさんがお山のてづくり市にお菓子を出している方だったんです。それで「一緒のテントで出店しない?」と誘ってもらって、こちらでもお菓子の販売をはじめました。

そこから次第にやりたいことが広がってきて、自宅を改装して正式に営業の許可もとりました。ホームページを立ち上げ、インターネットでの販売、地元での出店、市内のこだわり宅配に掲載…と、気が付いたらいろいろと広がっていました。