【地元の和の素材で洋のお菓子作りを】後編  家事育児&洋菓子販売

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お菓子づくりのこだわり

── 移住先での誘いがきっかけだったとはご縁ですね。お菓子作りの内容についてもお聞きしたいのですが、特にこだわっている点などはあるでしょうか。

上土井: できるだけその土地の素材を使うことを意識していますが、やはり一番の特徴は卵や乳製品を使っていない点だと思います。

 

── 洋菓子のお菓子というと、一般的に卵や乳製品を使うものだと思っていましたが、それはなにか特別な理由があって使っていないのでしょうか。

上土井: 私の子どもがアレルギーだったことがきっかけでした。本人が食べておいしいと感じても、食べたあとで体に発疹が出てしまって。これはどうにかできないだろうかと考え始めました。
どんな人でも安心して食べられるお菓子を作ろうと思って、「確かな食材を使う」「卵と乳製品を使わなくても美味しい焼き菓子を」と思って始めました。

 

(嶺北産の米粉を使った米粉のさくさくショコラ。小麦アレルギーの人も食べられます)

 

ひとつひとつの素材から

── 卵や乳製品を使わずに確かな素材で作る焼き菓子とのことですが、原材料でも気をつけている点などあるのでしょうか。

上土井: やはりできるだけ地元の品を使うようにしていることと、遺伝子組み換え食品を使わないようにしています。そして薄力粉や全粒粉などの粉は、低温でじっくり焼き上げた香川県の石臼挽き粉を使っています。

砂糖は上白糖は使わずに国産さとうきびから作られたきび砂糖を、てんさい糖は北海道産てん菜から作られたブラウンシュガーを使っています。

油は国産の無農薬菜種、化学薬品を一切使用せず抽出した菜種油を使っています。ココナッツオイルはコールドプレス製法で抽出されたオーガニックのヴァージンオイルを使っています。

 

── ひとつひとつの材料の出どころや、どういう経緯でつくられたものなのかを知った上で材料として使う。作っている人の顔が分かるものなら、より安心できますね。

 

(ロシアンクッキーを焼く前の様子。一つ一つ丁寧に作っています)

 

上土井: 子どもが安心して口に入れられるものをと思うと、やっぱりちゃんと気を配りたいという思いがあります。
なおかつ地元で採れたものはとても新鮮です。特に旬の野菜や季節のジャム、米粉やお茶(土佐町の南川茶)は、ほぼ土佐町の特産品を使っています。

ここで採れないナッツやドライフルーツ類は、オーガニック表示のものだけを使用してします。

 

── 価格や新鮮さを考えたら、地産地消のものの方がフードロスがなく、余分な経費もかからないといいますよね。その上オーガニック食材であれば、買う側としても安心できますね。

上土居: はい。あとは素材の声をききながら丁寧につくることを意識しています。見た目もできるだけかわいく、食べてみて体と心がよろこぶものを一つ一つ選んでいます。

(搾りだしクッキーに高知県嶺北産いちごの自家製ジャムをのせたロシ アンクッキー)

和の素材で洋菓子を

── 日本には、昔から伝わる餡を使った和菓子がありますが、上土井さんが和菓子ではなく洋菓子を作られているのは、どうしてでしょうか。

上土井: もの心ついたころから洋菓子が好きでした。ずっと東京で育ってきたので、小さな頃から近所に洋菓子屋さんが身近にあった影響かもしれません。

和菓子はより伝統的な技術や製法を知っていないと、ちゃんとおいしく作れないのではないかな… というイメージがあります。自分で勝手に敷居を感じてしまっているだけかもしれませんが。

そう、土佐町にきてから自分で作るお菓子の味が変わってきました。

 

── どんなふうに味が変わってきたのでしょうか?

上土井: 味がすこし滋味深くなったというか。一つの理由としては、ジャムやペーストにする果物が新鮮でおいしいからだと思います。

この地で採れる果物は、都会で暮らしていた時と比べものにならないくらい安くて量もたくさん手に入るんですね。安いどころか、近所の方から無農薬の果物をたくさんいただいたり。

買い物できるものの選択肢という面では、便利な場所とは言えないかもしれませんが、この地ならではの素材のフレッシュさは本当にうれしいです。

 

── 自然の近くに引っ越してきたことで、味に磨きがかかったと…。暮らす環境がお菓子作りの味の面においても影響するのですね。

上土井 :移住によって得られたうれしい産物ですね。これからも色々な種類のお菓子を作っていけたらと思っています。

インタビューさせてもらった人

上土井 恵子(かみどい けいこ)

東京生まれ。子どもの頃からお菓子を食べることが好き。中学・高校での吹奏楽部では物足りず、大学で音楽を専攻。そこでプロの厳しさも学ぶ。OL時代には茶道に没頭し和の心と所作を学ぶ。結婚を機に京都に移り住む。子育てのために水が綺麗で自然豊かな場所を探し2015年に土佐町へ移住。この地ならではの新鮮で美味しい果物、野菜を使って焼き菓子の製造、販売をしている。

 恵菓 http://keika-sweets.com/【素材の味を引き出すため卵・乳製品を使用せず、高知県土佐町の地元の特産品を使った手作りの焼き菓子です】