れいほく先輩移住者へのインタビュー 杉本和也さん


『自分の価値観は自分の中にある』
~可能性0と言われた農業に挑戦~

 

杉本 和也さん 「はるひ畑」

移住するまでの経緯
農業に興味があり田舎暮らしをしたいと考えていたところ、大豊町の町営住宅に空きがあるとの情報を得て、南国市から6年前(2005年)に引っ越してきた。杉本さんは高知市出身だが、祖父母が大豊町出身で、叔父が大豊町で農業をしている。引っ越してから3年ほどは前職であるプログラマーの仕事を続けており、南国市まで通勤していた。高速を使って15分、もしくは下道で30分、信号は殆どなく通勤に不便はなかったという。農業をしている叔父の影響を受けて、2年前(2009年)に会社を辞め農業を始めた。
実は当時、「おまえのどこを見ても、1%も農業で成功する可能性はない!」と、親戚中から反対を受けたそうだ。しかし、その反対が逆に力となり、何としても成功させようと杉本さんを勢い付ける結果となった。現在は杉本さんの努力もあり、親戚は協力的になり見守ってくれているそうだ。高知市出身の奥さんと2人のお子さんと共に暮らしている。

【仕事】
・農業を始めるにあたっての経緯は?
大量生産大量消費の社会の中で、物を大切にしろと教えられてきたが、物を買い換えていかないと経済が成り立たないという矛盾を感じていた。前職プログラマーの仕事は、物を作って捨ててということを繰り返さなくても、電気代・機械費程度でサービスが提供でき、経済がまわっていくという大義があった。しかし、それは生きていくうえで必要なものではない。生きていくのに必要な衣食住、その中でも一番重要な「食」という部分に関わっていきたいと思うようになった。「食」に関わる方が生きているという感じがするのではないか。そして農業をしている叔父の話を聞き、影響を受け農業を始めようと思った。

・農業を始めてみてどうですか?
専業農家だが、夫婦で別の仕事をしているので、ある意味兼業でやっている。妻の収入が無ければ、アルバイトしながら始めていたと思う。農地は叔父や役場が紹介してくれ、運良くスムーズに見つかった。主にトマトをつくっていて、直売所やスーパーに出荷している。嶺北は冷涼な気候で、夏は涼しく農業をしやすいが、冬は寒くて農業をしにくい環境にある。高知の平野部は、夏は暑すぎて野菜があまりつくれないので、嶺北の冷涼な気候を生かして平野部の野菜が無くなる時期に野菜を提供できるという利点がある。高知は冬に温暖な気候を利用して農業をする人が多いので、その時期にライバルが多いが、夏場の野菜が不足する時期であれば少ない。

・作りかたにはどのようなこだわりがありますか?
■ 土壌診断 ~できる範囲で数値化~
有機農業を始めた頃はあまり情報がなく、皆自然が一番という考え方で、違和感を持っていた。そんな時、ある勉強会に行って、土壌診断をして不足分の栄養素を補足する方法を学び、これでやっていこうと決めた。今は自分で土壌診断をして、どういう肥料をあげるか考えてやっている。どちらかというと、感覚に頼れるほど能力もないので、できる範囲で数値化してやっている。植物の健康状態を良くするために、微生物の関係なども勉強している。自然にだって毒はあるし人間の体に悪いものもある。長い目で見れば環境が変わっていくのも自然。例えば砂漠になるのが良くないという話もあるが、もう少し原因を考える必要があるのでは。自然が一番だと、人間がつくった自然の中で考えるのは変だと思う。
■ お客様視点 ~一番大事なことは悩み続けること~
自分の感覚だけでやっていると、消費者の感覚と離れていくこともあるので気を付けている。意外と見た目は重要。曲がっていても構わないというポリシーで出していても売れ残ったら意味がないので、そういうことも頭に入れておかないといけない。
農業をやるならば、誰に食べてもらいたいか考えることが大事だ。有機農家さんは比較的高い値段で出している方が多いが、自分が消費者だったらちょっと高くて買わないと思う。例えば贈答用であれば、付加価値をつけて立派なものをつくって売ることは必要だと思う。しかし、毎日食べているものは無理せず気苦労せず食べてもらいたい。農家には日本人の食を預かる義務があるのではないだろうか。ある程度流通価格を意識する必要があり、そうしてお客さんに歩み寄ることが大切だと思う。
一番大事なことは悩み続けること。本当にこの価格でいいのだろうか、今年も悩むし、来年も悩むと思う。でもそれでいいと思う。この価格にはどういう意味があるのだろうか、考えることが大事。お金ってなんだろうって考えたときに、需要と供給があってお金が発生し、価格が決まるわけで、相場の価格は無視できない。今のところもっている意見です。

【生活】

・今の住居での生活はどうですか?
今は町営住宅に住んでいる。極力畑の近くで、空き家に住むことに憧れているが、町営住宅にもメリットはあって、周りを他の住居に囲まれていることで暖かく、暖房費がかからないのでエコである。家賃は3万で共営費が5000円くらい。車の使用が欠かせないことで、ガソリン代は増えたが、食費は少し減った。生活費としては、南国市で暮らしていたころとあまり変わりはない。

・移住してからのライフスタイルに変化はありましたか?
大豊町に越してきてからストレスはなくなった。ライフスタイルや環境の変化のせいか、目が良くなった。夏は休みなく働いているが、冬場は好きなことをしたり研修を受けたりと堪能している。プロ野球選手のような感じで、夏に短期で稼いで、冬は自主トレ期間。若いのでもう少し働きたいとは思っている。昔の人の価値観だと、わりと仕事していないと遊んでいると思われると思って、余計な仕事までする人もいるが、自分の価値観をしっかりもってやっていったらいいと思う。

・子育てはどうですか?
6歳と2歳の子供がいて、来年からは小学生になる。学校までは歩いて通学。クラスの人数が少ないので、合う友達がいなかったら心配だが、田舎も都会も優秀な人はいて、特に気にすることはないと思っている。

・嶺北の魅力は?
高速のインターが近くにあり、田舎なのに高知市に近いこと。こんなに山なのに町に近い、こんな処は他にない。四国中央市や徳島にも近い。飲み会が高知市であるときや、車が無ければ不便かもしれない。

【移住について】
・ご家族の反応は?
めちゃくちゃ反対された。僕ほど反対された人はいないのではないか。今は協力してくれているが、「おまえのどこを見ても、1%も農業で成功する可能性はない」と言われていた。親戚中に、「協力するな。協力して少しでも長続きさせたら大やけどするから早めに失敗させろ、早くサラリーマンに戻らせよう!」と働きかけがあったらしい。「おまえには1%の才能もない!」と言われたときには、逆にこれはいただいたと思った。それでもやったということがこういうふうに話のネタにできると思って。
自分でできると思ったら反対されてもやった方がいいと思う。僕はあまり短期間で何かするパワーはないけど、こつこつやり続けてきたことはある程度のものにしてきた自信があった。それがやっぱりいくら言われてもできると思った理由だと思う。
最初反対されてもうまくいかなくても、自分で何がいけなかったか徐々に振り返りながら、ゆっくりだけど必ず前に進んでいくという自信があったので、精神的にも苦痛がなく続けている。まだ2、3年なので偉そうなことはいえないが。

【未来】
・これからの夢、目標について
目標は悩んでいるところがあって、規模をどれくらいにするか考えている。一つは自分ができる小さな範囲で効率を高めいく方向性。その方が楽しいし、冬スキーに行けるし、ストレスが少ない。自分の生活に困らない程度で満足するならそんなに難しいことではない。
一方で規模拡大という選択肢もある。今の農業の現状からいって、大規模農業が増えてくることは確か。商店街が減って大型デパートが増えているのと同じように、規制緩和により、ここ10年農業をする法人が増えている。別業者から参入してくる形態もあるし、農家が成長するにつれて法人化するという傾向も増えている。今後後継者のいない農地が、団塊の世代が退職するにつれて増えていくだろうし、そしたら大規模経営したいという人にはチャンスで、どんどん借りていけるようになると思う。お米も規模が大きければ儲けられるし、なんにしても規模が大きければ効率化できると思う。
法人化には社会的責任があり、責任をもって事業化し継続させるということが必要だ。仕事でトマトを購入する人がいたら、個人の場合、いつまで提供してもらえるのか、取引先としては不安であるが、法人とお付き合いしていれば、安定して供給してもらえるのではないか。地域活性化という点からも、人を雇えるようになれば雇用を増やすことができる。ただその場合は冬も稼げるようにしなければならない。冬に平野部へ畑を借りに行くとか。
もしくは自分と同じような人を増やすか。1,2人アルバイトを雇って楽々悠々自適の生活を送るのか、規模を拡大するのか、それは今悩んでいるところです。

移住希望者へのメッセージ

自分の価値観をどこにおくかが重要。人に評価されないと価値を感じられないのではなくて、自分で自分のやったことに価値を感じられることがもしできたら、すごく楽。自分のしたことに対して誰も評価してくれないっていじけてしまうと、それはもったいないというか、損している。自分の価値観は自分の中にあると、自分でやってこれってすごいって思えたら、他の人に何言われようが関係ないので、そういう心構えがあったらいいと思う。
ただこれは性格による。やっぱり多くの人は他人からの評価を自分の価値観にしてしまうと思う。上司に認めてもらったり、学校の宿題はしっかりやるけど義務づけられたことしかできなかったり。人から評価されることだったら一生懸命やるけど、自分がやると決めたことに対して手が出ないというのは、どこに評価、基準があるかってことだと思う。



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