中学生と向き合って感じたこと
〜土佐町中学校3年生「空き家再生プロジェクト」〜


2016年9月14日

土佐町中学校3年生「地域貢献学習 空き家再生プロジェクト」

 

先日、最後の授業がありました。

中学生が改修した空き家を、

私たちれいほく田舎暮らしネットワークが引き継ぎ、

今後、移住希望者につなげることを確認しました。

中学生から「目録」をいただきました。

また、実際に使用している土佐町内の物件情報が載っている「物件ファイル」や、

中学生が改修した空き家のデータ(写真、間取りや家賃、家の状況をまとめたもの)を見せると、

「おぉ〜」というどよめきが起きました。

実際に移住希望者の方が来た時に、どんなふうに家を紹介するのかの説明もしました。

「目録」の内容

「中学生のみなさんがしたことは、イベントで終わりではなくて、続いていくこと。

誰かがここに住むことができる可能性をつくったということ。

そこに人が住んだら近所の人とのつながりがうまれる。

誰かの幸せにつながること。」

そういった話もしました。


 

 

 

 

 

中学生たちは、部活、勉強、体育祭の練習もあるなか、

夏休み返上でほんとうによくやりきったと思います。


町内に空き家がどこにあるか調査する。

その空き家の大家さんは誰か、わかる範囲で調べる。

空き家を探していることを町内放送で呼びかける。


何件か候補にあがり、選ぶ時にもドラマがありました。

多くの人が実際に改修した家を候補にあげましたが、

その中で3〜4人が違う家をあげ、理由を説明。

少数でも、意見を意思表示できることが素晴らしかった。


 

設計班。どのように改修するか話し合っています。

とにかく仕事はどっさりありました。


改修するための補助金の申請の仕方を役場に聞きに行く。

予算立て。

空き家のどの部分を改修するか。

空き家にあった荷物の片付け。

草だらけだった庭の草刈りや剪定。

台所の壁を剥がし塗り直す。

べこべこだった床を直し、畳だけだった部屋を板間に作り替える。

町の放送とちらしで空き家情報をよせてくれるように呼びかける。

フェイスブックやブログに投稿。

地域の方へちらしを配る。

当日の看板作り。

動画作成。

改修の流れがわかるように展示。

カフェに並べるものを選ぶ。

パン屋さん、お菓子屋さん、道の駅などへ行き、値段の交渉、連絡。

実際に使用するもののリストアップ。

カフェのイメージ作り。

机や椅子は何を使い、どこに借りるか?

当日の人の動きを考え指示。

 

8月30日のイベントまでに間に合わないのではないかと思ったこともありました。

きっと迷ったり悩んだり、

自分の思い通りにいかず葛藤したり、

どうしたらいいかわからなくなってしまった時もあったでしょう。

限られた時間の中で、ほんとうによく頑張っていたと思います。

 

 

イベント当日、ひとりひとりが自分の仕事に取り組み、

空いた時間も何かできることはないか考えて動いていることがとてもよくわかりました。

イベントのフィナーレで、校歌を歌っていた中学生のみんなの背中が、

最初に出会った頃よりもひとまわりもふたまわりも大きくなっているように見えました。

イベントのフィナーレ。中学生の背中を見ていて、目頭が熱くなりました。

 

 

 

 

このプロジェクトでは、中学生にああしなさい、こうしなさいとは言わず、

中学生自身に考えさせる、選ばせる、という姿勢を貫きました。

「ここはこうした方がいいのでは」と思ってもそのことは言わず、

「ここはどうする?」と中学生に質問をするかたちで、そのことを考えさせる。

私は、このことが思っていたよりも難しかった。

時間がかかるし、つい、うまくいくようにと手出し口出ししそうになるからです。

でも、それをしない。

そのことがとても大変でした。

私の小学校や中学校時代を振り返ると「あれをしましょう」「これをしましょう」と

言われることが多かったんだな(ほとんど?)と思います。


これからの教育に必要なのは、答えを教えることや正解を導くということではなく、

いかに自分で考えることができるか、考えたことを自分の言葉で話し伝えることができるか、

ということなのではないかとあらためて感じました。

総務班。いろいろな人の意見を聞きながら、最終的に自分たちの意見を持てたことが素晴らしかった。

6月からこのプロジェクトに関わらせていただきましたが、

最初はどんな風に加わっていったらいいかわからず戸惑うことも多かったです。

何度も顔を合わせていくうちに、中学生の方から聞いてくれるようになり、

ある子に間違って「せんせい」と呼ばれた時は、

なんだか少し近づけた気がして、うれしかった。

恥ずかしそうに「あ、ちがった!」。

こどもが先生のことを「お母さん」って呼んでしまう感じ(笑)

初めの頃、中学生たちは

「なにをどう進めていいのかわからない」「わからないことがわからない」という状態でした。

そのなかで「考えることがいっぱいありすぎる!」と言っていた子がいました。

 

それはとても大切な学び。

 

ひとつのプロジェクトやイベントを作るにあたって、ほんとうにたくさん考えることがあります。

予算や段取り、準備物、当日までのスケジュール組み立て…

他のさまざまなイベントもこういう過程を経て作られている、ということも感じていたようです。

中学生の意見で「板間もあったほうが良いだろう」ということで、畳だった部屋を板間へ。

わからないことは、「わからない」でいい。

「わからない」ことがわかったら、

自分で調べたり、分かる人に聞いたり、次の方法がある。

授業に関わった大人たちはこう思っていましたが、

中学生たちは「人に聞く」「人に聞いていいんだ」ということが

あまりイメージできないようでした。

もしかしたら、「自分で考えなさい」「自分でやりなさい」と言われことも多く、

そうしないといけないと思っていたのかな。

 


今回のプロジェクトでいうならば、

設計や補修を具体的にどうしていったらいいか?

どんなふうに広報していったらいいか?

どんなふうにカフェをつくり上げるか?

どんなふうにお金を集めるか、使うか?


考えてわからないことは大人に聞いていいんだ、ということも知ってほしかった。

大人はチームで仕事をすることも多いし、田舎だと普段の生活でも助け合うことが多いです。

必ずその道に長けたエキスパートの方がいます。

知りたいことをその方に聞かない手はありません。

 

(最初から丸投げではない状態で)人に聞いていいということ。

個をもったひとりひとりが集まってチームで仕事をすると、

仕事の意味や喜びが何倍にもなることを感じてほしかった。

私は、このプロジェクトを通してチームで仕事をする大きな喜びを感じていたので、

大人になるとこんなに面白いことがあるよ、ということも伝えたかった。


 

高知新聞の記事を見て、町外から来てくださったお客さまもたくさんいました。

最後の授業には、イベントまでの振り返り、

自分がどう変わったか、これから自分ができることを考える時間がありました。


自分にとっての「地域貢献」とは何か?


「自分の夢をかなえるために土佐町を出る。夢をかなえるまで戻ってきません」

「土佐町を外から見てみて、いろんな経験をして帰ってきたい」

「どんな場所にいても土佐町のことを忘れないでいる」…


ひとりひとりの発表ではなかったのですが、

多くの子が「土佐町を出ていく」と考えているようでした。

嫌だからとかそういうことではなくて

「自分がやりたいことがあるから、夢があるから、だから出て行く」と考えている子が多いようでした。

こどもたちの言葉を聞いていて、

どんな場所を選んでも、

どの子も自分が育った町のことを

これからも心に置いていくのだろうな、ということを実感しました。

カフェには学校の机と椅子を使いました。土佐町のアーティストさんの絵と陶器の展示販売も。

机の上のお花は、イベント当日の朝、土佐町の花農家さんが届けてくださいました。

この授業に関わった大人たちへも

「自分にとっての「地域貢献」とはなにか?」というお題をいただきました。


地域貢献、という言葉。

地域のために、というイメージがありますが、

私は「自分がやりたいことだからやっている」という感覚です。

自分のやりたいことが誰かにとって役に立つことだったり、誰かの幸せにつながったり、

地域のためになるのなら最高です。


 

 

今年の夏、2年ぶりに帰省し、懐かしい中学時代の友人と会いました。

お互いお母さんになっていて子育て真っ最中。

ひさしぶりに会ったのに一気に中学時代にタイムスリップし、話は尽きませんでした。


その時、気づいたのです。

こちらでの生活に夢中で、忘れかけていた私の中学生時代。

私にも「15歳」であった時間が、確かにあった、という実感。

15歳のあの時に考えていたこと。

悩んだり迷ったり泣いたりしたこと。

あの時は真剣だったけど、今思えば幼くて、たくさんバカみたいなこともした。

 

でも、今はわかる。

無駄なことは、ひとつもなかった。

全部全部、今の私につながっている。

そのことがはじめて実感としてわかった。

大人たちも話し合いを重ねました。

私は今まで自分のことがあまり好きではありませんでした。

でも、ほんとうに最近、やっとやっと、

今の自分を好きだと言えるようになってきたのです。

中学を卒業して20年以上たっていて、

その間にほんとうにいろんなことがあって…

がんばってきたこともあるし、あきらめてしまったこともある。

 

そんな私に今言えることは、

どんな経験も、自分で選んだと思えることならば、

自分自身の大切な土台になるんだ、ということ。


中学生の時は、

将来、土佐町に住むことになるなんて思いもしなかった。

でも、今、私はここにいる。

迷いながら悩みながらも自分なりにもがいてきたから、きっと今があるんだなと思えるようになった。

 

 

自分にとって好きなことややりたいことがある人はそれを貫き、

まだ自分がどうしていきたいのかわからない人は、

今できることをこつこつを積み上げていくことで、きっといつか花開く時がくる。

どうかあきらめたりせず、自分らしい人生を歩んでほしい、ということを話しました。

最後の授業。1学期の頃の表情とは全く違います。

土佐町を出てもいい。

どこへ行ってもいい。

日本中、

世界中、

自分が選んだところで生きる。


今の中学生が大人になる頃は、きっと世界中がフィールドになるような時代。

どの場所で生きることを選んでも、学び続け、自分らしくあれればいいのだと私は思います。


多感なときに育った場所での経験を土台に、さまざまな経験を積み重ねる。

その時その時の自分の選んだ道を歩いていけたら、

きっと自分の隣のひとと幸せを分かち合える。

そのことが隣のひとに、またつながっていく。

それが地域へ、町へ、県へ、国へ、世界へ。

そんなふうにつながっていけたら素敵だなと思います。



れいほく田舎暮らしネットワークとしてこのプロジェクトに関わらせていただいて

ほんとうにありがたく幸せなことでした。

多感な中学生と一緒に同じ時間をすごすことができたこと、

これからもまたどこかで会ったら挨拶ができる、話ができるということはとてもうれしいことです。


中学生から引き継いだ物件や情報を、れいほく田舎暮らしネットワークが責任を持って引き継いでいきます。

 

土佐町中学校3年生の皆さん、土佐町中学校の先生方、地域の皆さん、土佐町役場の皆さん、

イベントに来てくださったみなさん、本当にありがとうございました。

そして、一緒に考え続けた大人のみなさん、

みなさんと一緒に仕事をすることができて幸せでした。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

NPOれいほく田舎暮らしネットワーク  

鳥山百合子  


〒781-3521
高知県土佐郡土佐町田井1667
土佐町農村交流施設おこぜハウス内
担当:川村
TEL:0887-72-9303
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